地球規模の環境汚染や気候変動、続けざまに発生する自然災害、人心の荒廃や国家間の感情的な対立など、人類はいまだかつてなかったほどの難局に直面しています。

私が子どもの頃、「21世紀」という言葉には、希望に満ちた輝かしい未来社会をイメージさせる響きがありました。ところが、現実はいつ破局を迎えてもおかしくない、厳しい世界情勢となってしまいました。
一体、このような事態を招いた原因は何なのでしょうか。化石燃料を大量に使っているから‥? ポピュリズムが蔓延しているから‥? 確かに、直接的な原因だけを捉えればそうかもしれません。しかし、ではなぜ大量生産大量廃棄を止められないのでしょう。再生可能エネルギーへの切り替えが遅々として進まないのでしょう。なぜ人々はポピュリズムに酔いしれるのでしょう。突き詰めて考えていくと、私は文明そのものの方向性に懐疑を抱かざるを得なくなるのです。
西洋に端を発した現代文明は、物質的・経済的な充足のために人々を狂奔させ、人間として一番大切なもの、すなわち霊性とそこから生じる輝かしい智慧を見失わせてしまったのではないでしょうか。
「霊性」という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、鈴木大拙はその著『日本的霊性』(1972、岩波書店)の中で、「霊性は精神の奥に潜在しているはたらき」であると定義し、「これが目覚めると精神の二元性は解消」すると述べています。通常、私たちはこの世が物質で構成され、精神(心)によってそれらを認識していると考えています。しかし、霊性は物質と精神とを包括し、この世を一元的に捉える働きがあるということです。
ところで、私はこれまでの教員生活で、優れた児童文学や絵本などの奥深さに感銘を受けてきました。いずれも子ども向けの単純な読み物と思われがちですが、世俗的な思考に麻痺した現代人が見失ってしまった大切な心をテーマにしていることも多く、貴重な示唆を与えてくれます。時には霊性の輝きさえ読み取れることもあり、私はそこに未来社会への一縷の望みを感じているのです。
そのような優れた作品を発掘し、その深層を解明するのが現在の私の研究テーマです。